人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2006年 08月 03日
F1:"マス・ダンパー"論争の是非を問う
 明日からは低速テクニカルコースのハンガリーGPだが、今回はその前に大きな波紋を呼んでいる「マス・ダンパー論争」について少し取り上げてみたい。
F1:\"マス・ダンパー\"論争の是非を問う_f0058896_20341680.jpg

 今年のルノーRS26に標準装備されていた、マス・ダンパー。この、創造力を結集させた効果的なデバイスは、ルノーが先駆けて開発を重ね、その効用はラップ当り、コンマ2-3秒と推定されている。シーズン半ばに、その効果に着目したフェラーリも遅れて開発を始め数戦マス・ダンパーを使用したようだが、その効果がルノーのように認められなかったことから、フランスGPから使用を見合わせている模様。他チームもこれから開発に着手しようか、と言う状況の中、今回の1件は起こった。
(マス・ダンパーのテクニカルな記述については、ニックさんのブログのエントリーが非常に分かりやすく記述されていますので、そちらの方が間違いなく参考になります)
 まず、フランスGP終了後、FIAからマス・ダンパーは突如"レギュレーション違反"という烙印を押されて使用を禁じられた。これには、複数チームの"入れ知恵"とも言える密告にFIAが耳を傾けた結果だと報じるメディアもあるが、真意の程は定かではない。とにかく、シーズンも半分が過ぎたところでいきなり「使用禁止」の命令が下ってしまったわけだ。
 そもそも、なぜシーズンも半ばを過ぎた今頃に禁止命令が下るのか。レギュレーションというルールがあるにもかかわらず、シーズン中に判定が下るなんてちゃんちゃらおかしいと言わざるを得ない。
 "法は破られるためにあるもの"という、ちょっと皮肉った言葉もあるが、現在のF1の開発をめぐる攻防は、とどまるところを知らないラップタイム向上の抑制に必死のFIAと、少しでもタイムアップを果たしライバルチームを出し抜きたいコンストラクター側の、生き馬の目を抜くような熾烈な争いが展開されている。そんな複雑怪奇化している現状のテクノロジーを、条文だけで抑制しようとする為、これまたとてもファジーな表現が多くなり、解釈のしようによっては、どのようにも取れるような素人には分かりにくい条文が、レギュレーション・ブックを賑わせている。
 しかし、技術者たちはそのレギュレーションの解釈を逆手に取ったり、盲点を突いたりして色々なデバイスを開発し、禁止された経緯があるが、このマス・ダンパーに限っては、現状のレギュレーションでは、禁止するのは不可能とも思えるような、真っ当な発想と技術が折り込まれた、革新的なダンパーである(少なくともF1においては)。
 だが、FIAは全18戦のうち11戦が終了したフランスGP後に、マス・ダンパーの使用を禁止を名言。初戦から標準装備されていたマス・ダンパーはドイツGPから使用禁止となった。
(ちょっと古い話で恐縮だが、この経緯は○年のティレルのXウィングに少し似ていると八百屋は思う、あの時も他のチームが真似しだした矢先の突然の禁止だった)
 しかし、ルノー側としてはこの決定を納得できるはずも無い。開発の段階からこのデバイスについては、FIAに合法かどうかの照会を行っており、その時点での見解は「合法」。しかし、蓋を開けたどこか、蓋を開けて弁当を半分以上食べてから「弁当を食ってはいかん!!」と言われたのと同じ状況。どうにも納得できるわけ無く、ドイツGP時に、レーススチュワードに、マス・ダンパーを装備したRS26を持ち込み、再び合法かどうかの照会を行った。

 その結果はご存知のとおり
 「合法」。
 かくして、マス・ダンパー論争が巻き起こったのである。

 この判定を受けて、ルノーはハンガリーGPでのマス・ダンパー使用を名言。
 フェラーリはこのルノーの行為に訴訟行為も辞さない構え。
 FIAは、暫定的にハンガリーGPのみ「マス・ダンパー」の使用を認める裁定を下し、結論はトルコGP以降に持ち越しとなった。

 なぜ、このようなトラック外での「ドタバタ」が起きてしまうのか、甚だ疑問だ。
 更に問題なのは、FIAの見解とレーススチュワードの見解に大きな温度差があること。まさに、真夏と真冬のような両極の見解が、今回の問題に混乱の拍車をかけている。要は、それほど、レギュレーションの解釈には個人差があり、誰がどのように捕らえても仕方が無いような欠陥を含んでいる、と言うことを端的に表していると思う。
 
 八百屋の見解としては

■ 使用を始めて10戦も過ぎてから、禁止を宣言するのはおかしすぎる。せめて数戦のうちに合法か違法のジャッジを下すべきである。
■ とる人によって、解釈が十人十色に変化するようなレギュレーションは、欠陥であると言わざるを得ず、その盲点をついたデバイスはFIAは容認する"責任"がある。


と、思う。図らずしも、ドイツGPでルノーは大敗。同じMI勢でも、ライコネンばかりか、シーズン中不振にあえいでいたHONDAのバトンにも前を行かれ、トラブルが無ければウェバーにも前を行かれていただろう。事実上、シーズン初の大敗を喫している。
 ドイツGPの結果は、ルノーのマス・ダンパーが無かったからと言うだけでは説明がつかないと言う節もあるがそれにしてもこのような不条理な理由で禁止されて、結果が伴わなくなると、至る所から不平が噴出するのは当たり前である。


 シーズンも10戦を越えて使用を容認していたデバイスを、突如として禁止すべきではない。
 技術的開発の側面から考えても、このような裁定は、一部のチームに著しくアンフェアーであると言わざるを得ない。
 考えようによっては、FIAがルノーの独走を止める為の"演出"のように見えてしまって仕方が無い。
 たとえ、ルノーが独走しレースがつまらないものになったとしても、このような「合いの手」を入れるべきでは無いと思うし、
 フェラーリは、今年に限って言えばこの苦境を跳ね返すだけの技術力と結束力を有している。

 レースは、参加している者が盛り上げるものである。
 取り仕切っているものが盛り上げるべきではない。

 過去にも、トップチームを始め複数のチームを"いじめた"FIA。
 そろそろその過ちに気が付かないと、F1も大きな岐路に立たされるだろう。
 人や金や技術を大きく制限して、尚且つ人を呼べるようなエンターテイメントをFIAが、我々に提供できるとは到底思えない。
 自由主義経済の下の競争と言う言葉に"フェアー"という言葉は成り立たないのは分かったつもりで言わせてもらえば、せめて"レギュレーション上"では全チームがフェアーであってもらいたい。
 ルノーとフェラーリの"がちんこバトル"はハンガリーGPが見納めになるかもしれない。
 技術と発想の結晶"マス・ダンパー"は、路面のアンジェレーションの多いハンガリーでは、大いに効果を発揮するはずだ。
 両チームの威信をかけた争いに、注目したいと共に、曖昧な態度で多くの人間を翻弄するFIAに、警鐘を鳴らしたい。
(こんないち八百屋が鳴らしたってどうしようもないけどね…(^^ゞ)

by 5aday | 2006-08-03 20:37 | 2006 other issue


<< F1:徐々に埋まってきたぞ!?...      Family:八百屋、動物園へ行く >>