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2006年 07月 23日
サッカー:W杯2006振り返り企画#1:アジア代表に足りなかったもの
(あらかじめお断り:今回のオーストラリア代表はAFCに加入していますが、便宜上アジア代表からは外させていただきますことをご了承下さい)

「今回ジーコはどんなサッカーをしたかったんだ?」

-クロアチア戦終了後、あるドイツ人プレスが、日本人プレスに問いかけた言葉-


【アジア勢惨敗と縮まるアジア枠】
 今大会のアジア代表枠は4.5。0.5枠はアジア予選の5位チームと、北中米カリブ海4位のチームとのプレーオフで、実際はバーレーンとトリニダードトバゴがhomeアンドawayで戦い、トリ・トバが逆転でW杯初出場を決めた経緯がある。
 今大会のアジア代表は、日本・韓国・イラン・サウジアラビアと極めて順当な4カ国となった。前回の日韓共催に出場した中国は、5位にも滑れず予選敗退。中国としてはまだまだアジアでも中位のレベルでしか無い現実をまざまざと見せ付けられた結果となった。
 しかし今回のアジア勢は結果を見ても「惨敗」と言う言葉しか出てこないほど、ぐうの音も出ない結果に終わった。
 韓国を除く3カ国は、2敗1分で勝ち点1。勝利ゼロで総得点2と言う寂しさ。サウジアラビアと日本は7失点も喫している。
 善戦した韓国も1勝1敗1分で勝ち点4。得点は3失点は4に終わっている。
 一番サッカーの内容も充実していた韓国ですら勝ち点で4で決勝トーナメント行きを逃したのである。他の3国に関しては「何をかいわんや」である。
 アジアでは韓国だけが世界への可能性を感じさせるサッカーを展開していた。準優勝国のフランスの失点3のうちの1点は韓国が奪ったものである。そのフランスと引き分けた韓国もグループリーグで敗退するのだから、世界の壁は相当厚いといわざるを得ない。日韓共催のホスト国がベスト16にコマを進めたのは、残念ながら地元の利を活かせたから、とか、フロックだと言われても言い返せない現実が待っていた。
 このアジア勢の惨敗で、おそらくアジア勢の出場枠は「4」に縮まる可能性が極めて高い。1部では、オーストラリアのAFC加入で4.5~5枠を確保できるのでは…という甘い憶測も流れているが、日韓共催時に3位に駆け上がったトルコや、ユーロ04の勝者ギリシャがW杯の舞台に出てこれない欧州の事情を鑑みれば
そちらに枠を振る方がはるかに高レベルなゲームを期待できると言う結論になってしまっても、仕方の無い状況。AFCは本気でレベルの底上げを考える必要があるだろう。


【日本を除く3カ国に足りなかったもの】
○ 韓国 … 取れるところで点数を取るしたたかさと層の厚さ
 アジア勢で善戦した韓国の欠点を指摘するのはいささか気がひけるが、それでも何が足りなかったかといえば1戦目のトーゴ戦。イエローで10人になったトーゴにあと1~2点取るようなしたたかさが無かったのが苦戦した最大の理由だった。2戦を終わった段階で勝ち点4ながら2位の韓国が、実は勝ちあがりの条件が一番厳しかったのは、全ては初戦で得点を稼げなかった「得失点差」にある。このため、韓国は最終戦のスイス戦に攻撃的に望まざるを得ず、結果的にスイスに足を払われた格好となり敗退した。
 また、02大会から主力がそれほど変わっておらず、またレギュラーと控えの差が大きかったのも敗退した理由に上げられる。サッカーは11人でプレーするゲーム。パク・チソンがいるだけでは勝てないのである。アドフォカート監督が、長期アウェー戦の日程を組み、勝負の為の精神力や現状の問題点を徹底的に洗い出したことで、最後の1年で戦力が飛躍的に向上したが、層を厚くするには至らなかった。
 しかし、体力はアジア4カ国の中で間違いなく1番あったし、90分を通じてよく動けていた。世代交代を間違いなく押し進めれば、韓国は今後も期待が持てるだろう。

△ イラン … 体力とバランス。そして政治力というプレッシャーに打ち勝つ「マンパワー」。
 イラン代表は、こと攻撃力には大きな可能性を見せ付けた。それもそのはず。ブンデスリーガに所属する攻撃的なタレント4名、カリミ・ハシェミアン・マハダビキア・ザンディを擁しているだけ有り、攻撃に関しては緒戦であのメキシコを圧倒していた時間帯があった。また、若手も順調に伸びておりベテランと若手のバランスの取れた好チームになっていたのも見逃せない事実だ。
 しかし、メキシコ戦・アンゴラ戦ともに後半はスタミナ切れに伴う失速。これはアジア予選から見せていた体力的なウィークポイントを修正していなかったツケが回ってきた格好となった。
 また、ブンデスリーガ4人衆+ダエイという攻撃的タレントを全員同時にピッチに立たせてしまうとやはり守備力の不安は隠し切れず、緒戦のメキシコに後半立て続けに2失点したのも、スタミナ切れと守備の不安を突かれた結果であった。
 それに、アンタッチャブル的存在のダエイの処遇。これもイランに暗い影を落とした。
 どのナショナルチームにも、アンタッチャブル的な存在の選手の采配に四苦八苦する監督が多いが、ダエイの扱いにイヴァンコビッチ監督も苦労した事だろう。戦力的には外して当然の能力だったが、彼のこれまでの実績やイランの世論がそれを許さなかった。結局所詮、ダエイはほとんど何もしない「お荷物」のままピッチに棒立ち。ダエイが他の選手に代わっていれば、前半イランはリードで折り返せていたかもしれない。
 ダエイはおそらく今大会で代表を引退すると思われるが、やはりこのようなベテランを状況に応じては、切り捨てる決断力も監督の能力には必要な部分だと思われる。

× サウジアラビア … 監督だけではどうにも出来ない「宗教上の戒律」の壁
 サウジアラビアは、トヨタカップにアジア代表として出場した"アル・イテハド"を擁する国である。アジアレベルとして、サウジアラビアは依然高いレベルにあるのは間違いない。しかし、この国が世界レベルに出るとどうにもピリッとしない。前回の02大会では、緒戦のドイツに6失点を喫し大敗。アジアの恥とまで言われるほど、サウジアラビアのパフォーマンスはお粗末だった。
 彼らのサッカーは、堅守+カウンターである。身体能力の高さを活かした、フィジカルの強さと俊足を武器にしたサッカーは、アジアレベルでは強力な武器になりうる。他の強国はまずこのフィジカル部分で大きく劣っており、これがサウジアラビアがアジアではまだそこそこの強さを示せている最大の理由だろう。
 しかし、この堅守+カウンターには、絶大な決定力を持つFWを擁さないと、戦術としては成り立たない。ウクライナのシェフチェンコのような特筆すべきFWがいなければ、世界レベルでは通用しないのだ。
 残念ながら、サウジアラビアにはこのようなFWがいなかった。グループリーグ最終節、スペイン戦。スペインがわざと引いて守るというシチュエーションの中、サウジアラビアはスペインに怒涛のシュートを浴びせるも1本も決まることはなかった。拙攻、と言えばそれまでだが、やはり決定力のなさが響いた試合だった。
 しかし、彼らが選手の底上げを図るのに「大きな壁」が存在する。それは、宗教上の戒律から他国でのプレーができないのである。これは、それまでアジア最強と言われていたサウジが、それほど目立たなくなった最大の理由だ。他のライバル国は軒並み欧州に選手を送り込んでおり、世界レベルを経験している選手が増えてきた。その中で、彼らは同国内でサッカーを磨かなければならない。これは、非常に大きなハンデになる。
 残念な話だが、サウジが今後も大きく伸びる可能性は少ないだろう。もっとも、ずば抜けたタレントが数名同時にピッチに現れれば話は別だが、現状の制度ではズバ抜けた才能も、群集に埋もれたままになる可能性も高い。つくづくもったいない国である。


「日本の選手には、すべてを任せるにはまだ未熟すぎる」
-フィリップ・トルシエ 元日本代表監督-



【日本に足りなかったもの】
 今更、日本代表やジーコを批判しても仕方がないし、過去に沢山してきたので今回は箇条書きにまとめるにとどめて、その次の項目の"時代の日本代表に期待するもの"に行を裂きたい。

・90分間動ける体力
・主力組にも、ポジションを失うかもしれないと言う危機感と競争心
・監督・選手の信頼感(選手同士も含む)
・ソリッドな戦術とフレキシブルな采配

今大会の日本代表の凋落の理由は、監督8:選手2だと八百屋は見ている。殆どは監督に起因するものが多くもうここでああだこうだ言い始めると、長くなるので割愛したい。一つのエピソードとして、最終戦を前に日本代表が練習していたシュート練習のエピソードと、シュート練習の意味について記して、この項を了としたい。

最終節ブラジル戦を前に、ジーコは選手にシュート練習を課した。それは風のうわさでは500本シュートだったと言われている。
その選手のシュート練習に約2000人の日本サポが見つめていたそうだ。
しかし、シュート練習が始まっても一向にゴールにシュートが入らない。
これに、日本サポがざわつき始め、最後には「きっちり決めろ!!」と、ブーイングを飛ばし始めた。
これに対し、小笠原は
「シュート練習なんだからコースを突いたシュートを打つ。この場で入る入らないは問題じゃないんだ」
と、はき捨てるように言ったというエピソードがある。

このエピソードを聞いて皆さんはどう思っただろうか?
シュート練習と言うあくまで「練習」にブーイングを浴びせるサポが悪いのか。
それとも、小笠原の言い分が引っかかるのか。
あえて、八百屋はここでは言及しないが一ついえるのは、この状況で日本がブラジルに勝つ可能性は万に一もなかったと言うことだろう。
そして、選手にジーコは多くのシュート練習を課したようだが、それは実を結ぶことなく、ドイツ大会を終えたと言う事実だけが残ったのも何とも皮肉なことである。


「ジェフ千葉をすばらしい指導力で上位に導いたオシム監督こそ、次期日本代表監督にふさわしいと言う結論に至った」
-川渕三郎 JFA会長-



【次期日本代表に望むもの】
 日本の次期代表監督は、イヴァイツァ・オシムに決まった。いわずと知れた、ジェフ・千葉の監督がそのままクラブチームを捨てて代表監督に就任した格好だ。
 まず、日本代表に期待する前に一つ言わせていただきたい。
 ジーコに全権を委任した川渕は、今大会の結果を厳然と受け止めて辞任すべきである。それを、わざとフライングしたような言い方で、自身の引責問題をはぐらかすような手腕を用いたことは、卑劣極まりないし、何より日本代表のことを親身に考えているとはいいがたい。彼のような、代表を「食い物」にしか考えていない人物は今すぐ要職から身を引くべきだ。
 八百屋は、某国営放送の教育テレビで、珍しくサッカーを取り上げていた川渕が出演していた番組を2夜連続で見させていただいた。彼が、日本のサッカーに多大な貢献をしたのはよく理解した。それでも、ここ10年の彼の行動や発言は許されない内容を多く含んでおり、これが民間企業なら、引責辞任が当たり前である。
 このような人間が要職にいる限り、日本のサッカー界が健全に発達するとは考えられないことを、まず主張して本題に入らせて頂きたい。
  
 オシム監督の就任に、国内は極めて「歓迎的」な論調だが、彼の実績が1990年にユーゴスラビア代表を率いたい外、これと言った実績が無いに等しいことを考えると、実績ベースは「ジーコより少しマシ」と考えておいたほうがよい。
 また、走って走って考えるサッカーは、Jリーグのようなディフェンスのぬるいリーグでは通用しても、激しいプレスとハードなマンマークが幅を利かせた今大会のような世界レベルのサッカーでは、これまたまったく通用しないだろうと言うことも警鐘しておきたい。
 八百屋的には、オシムが適任だとは思っていない。
 しかし、ジーコよりははるかにマシだろう。
 勝利へのメンタリティーや、フィジカルトレーニングを軽視しない(ジーコはフィジカルトレーニングを軽視しすぎたため、走れない集団をも作り上げてしまった)オシム理論は、これまでぬるま湯の環境の日本代表に大きな変化をもたらすことは待つがいない。しかし、意識改革ができてもサッカーそのものへの影響力は極めて疑問だ。それはジェフ千葉を見ても解るが、彼がどのような戦術を軸としたサッカーを展開しようとしていたのかは不明だ。それが、ジェフの戦績が一定しない最大の理由である。
 とにかくどのようなサッカーを標榜するのか。オシムにはまず、その仕事をやってもらいたい。
 また、気になる世代交代についても
「井戸には、まだ汲む事の出来る水があるのに、新しい水が必要なのだろうか?」
と言う彼なりの比喩を用いた表現で、急速な世代交代を否定する発言を行っている。世代交代は、今日本代表に最も必要とされているテーマで、これから4年後を見据えたメンバーの召集と言うのを真剣に考えていかないと、4年後は更に惨敗する可能性もある。今までの彼らには「経験」と言う上積みがあったのにも関わらずこの成績だった。今の世代より下の世代は国際経験にも乏しい。よくよく考えた、明確なビジョンをもった代表案を持たないと、気がつけばジーコの2の舞にならないともいえないので、よくよく考えていただきたい。


【Jリーグに望むもの】
 この項の最後に、Jリーグに望むことを提言して、了とさせていただきたい。
 あまりJリーグを熱心に見ていない八百屋がこんなことを言うのはおこがましいのを覚悟で言わせていただければ、

・当たりの強いDFの奨励
・国産FWの早期育成

を挙げたい。
この二つは、実は密接に関わった問題である。
現状、Jリーグのトップ10スコアラーの内、8名が外国人で占められている。日本人は、我那覇(川崎)と佐藤(広島)の2名のみ。非常にお寒い状況だ。クラブチームとしては、運営上、得点愿を外国人に求めることは、現状の仕組み上もっともなことでありそれを否定するのはお門違いであることは承知である。
しかし、外国人が項も幅を利かせてしまう最大の理由は「日本のDFのゆるさ」だと思う。
当たりが弱い、マークもゆるい、そして何より今まで審判が神経質に笛を吹きすぎたおかげで、DFも飛び込みづらくなっている。日本のDFが大成しないのは、Jリーグの忌まわしき悪習があるからである。これを即座に見抜いた前々日本代表監督のトルシエが、フラット3と言う組織的守備にこだわったのも、1対1では欧州・南米の強国FWとは万に一も渡り合えないことを周知していたからだ。
 しかし、今大会の傾向は、カンナバーロやギャラスが見せた、激しいディフェンスであり(と、言っても悪質に削ったりするものではない)日本もこれに背を向けてばかりはいられないような気がしている。
 まずは、DFが激しく行くこと。くどいようだが削るというわけではない。クリーンに激しく。矛盾しているかもしれないが、プレミアリーグなんかは結構クリーンに激しいディフェンスが多いと思う。参考にしてもいいのかもしれない。そして、審判の質も同様。今年はW杯に標準を絞り、審判の反則の基準がシーズン前に大きく見直され、前のようにプレーが流れない悪しき風習は少しなりを潜めた感がある。それでももっと流していいプレーもあると思う。審判にも同様に向上していただきたい。
 そして、FWの人材育成。これが急務だろう。営利目的のクラブチームにとって、日本代表のFW育成など関係ない話であることは重々承知だが、それでもやはり日本人のFW選手に出場機会を与えないと、育つものも育たないのは、火を見るより明らかだ。とにかく若いプレイヤーは積極的に登用してプレーさせてもらいたい。こればかりは、どうにかなる問題ではないかもしれないが、そろそろ外国人国籍の選手を帰化させる流れは断ち切っていただき、日本の中でも良い選手を発掘する体制をとっていただきたい。
 得点力不足解消のための決定力のあるFWの育成。これは常に日本代表に付きまとってきた最大の課題である。
 この画題が解消できれば、世界水準に大きく近づけるのではないかと、八百屋は睨んでいる。

by 5aday | 2006-07-23 23:49 | FIFA Worldcup 2006


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